ランダムウォーク理論からはバブルの発生と崩壊は説明できない
フラクタル幾何学で解き明かされる金融市場の本当の姿
この本から学ぶ、資産運用に役立つキラーフレーズとは……
本の概要:
フラクタル幾何学によって、私たちの自然を見る目を変え、「雲は丸くなく、海岸線は滑らかではないこと」を数学的に説明した科学の世界の巨人=マンデルブロが示す「金融市場の本当の姿」。著者:
べノワ・B・マンデルブロ
フランスの数学者、経済学者。パシフィック・ノースウェスト国立研究所フェロー、IBM・トーマス・J・ワトソン研究所名誉フェロー、イェール大学名誉教授。フラクタルを導入したことで著名である。
『ウィキペディア ブノワ・マンデルブロ』より
この本から学ぶ、資産運用に役立つキラーフレーズ
“ランダムさの三状態ーマイルド、スロー、ワイルドー” p.ⅰ
“トラブルは続いて起こる” p.41
“巨額の利益と損失は短期間に集中して起こる” p.308
解説
“ランダムさの三状態ーマイルド、スロー、ワイルドー”
物質に三態ー固体、液体、気体ーがあるように、ランダムさにも三状態ーマイルド、スロー、ワイルドーがあると著者のマンデルブロは言います
従来の金融理論は、相場は最も単純な「マイルド」型のランダムさで変動するものとしてモデル化しています
しかし実際の相場はこのモデルよりも「理不尽な動き」をするので、マンデルブロが提唱するワイルド型のランダムさを想定するマルチフラクタル・モデルを適用すれば信頼性の高い金融理論を作ることができると主張します
“トラブルは続いて起こる”
市場の大きな変動は連続して起こる傾向があります
火曜日に大変動があれば、翌日水曜日にも大きな変動が起こる傾向が強まります
このことは直感的にイメージできることですが、この直感は効率的市場仮説には内包されていませんが、マルチフラクタル・モデルはこの性質を内包しています
“巨額の利益と損失は短期間に集中して起こる”
前述のトラブルは続いて起こると同じように、利益(上昇)も集中的に起こる傾向があります
1980年代、S&P500では、40%の利益が10日間に集中していました。これは総日数の0.5%にあたります。
これを含めマンデルブロは現実の金融に関する信条をまとめています
参考にしてください
マンデルブロ「禁断の金融10ヵ条」
- 市場価格とは乱高下するものである。
- 市場とは、きわめてリスクが高いものである-既存の金融理論ではけっして起こるはずのないリスクが、現実には起こる。
- 市場のタイミングは極めて重要である。巨額の利益と損失は短期間に集中して起こる。
- 価格はしばしば不連続にジャンプする。そして、それがリスクを高くする。
- 市場での時間は、人によって進み方が違う。
- いつでもどこでも市場は同じように振る舞う。
- 市場は本来不確実であり、バブルは避けることができない。
- 市場は人をだます。
- 価格の予想は無理と思え。しかしボラティリティなら予測可能だ。
- 市場における価値は、限定された価値である。
総合評価
難易度
上級(証券アナリスト等)
資産運用の役立ち度(星1~5)
⭐️⭐️⭐️⭐️
マンデルブロはバートン・マルキール氏の「ウォール街のランダムウォーカー」を皮肉って、「ウォール街のマルチフラクタルウォーカー(A Multifractal Walk down WallStreet)」という研究リポートを発表しています
英語ですが、もし興味のある方はご覧ください
https://pdfs.semanticscholar.org/3e60/9c490ae2ed34bd8880930130c981a7e189cc.pdf