「金融とは何のためにあるのか?」
株式市場は企業の資金調達の場としての重要性を失いつつある
その中で金融業界は何のために存在するのかが問われている
この本から学ぶ、資産運用に役立つキラーフレーズとは……
本の概要:
フィデューシャリー・デューティー、ガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、規制、報酬、訴追、預金保護、資産運用、多角化……
「ケイ・レビュー」で日本の金融庁をも動かした最強エコノミストが書きおろした世界的問題作著者:
ジョン・ケイ
1948年スコットランド生まれ
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員教授
オックスフォード大学 セント・ジョンズ・カレッジ・フェロー
エジンバラ大学、オックスフォード大学を卒業後、同大で講師として経済学を教えた。その後、英国で最も信頼されるシンクタンクである財政政策研究所でディレクター、オックスフォード大学のサイード・ビジネス・スクールの初代ディレクターなどを務める一方、多くの企業の取締役を歴任した。
英国政府から請われて証券市場改革案(ケイ・レビュー)を作成するなど専門家の立場から公共政策に関わり、大英帝国勲章を受章している。
フィデューシャリー・デューティー、ガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードなどを提唱し、日本の金融庁などにも大きな影響を与えたことでも知られる。
20年間フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿し続けたコラムニストとして、経済全般に関する鋭い洞察力と筆力で世界的に尊敬を集める世界最高のエコノミストの一人である。
『金融に未来はあるか』著者紹介より
この本から学ぶ、資産運用に役立つキラーフレーズ
“投資を行うということは、一義的にスチュワードシップなのだ” p.ⅱ
“収益機会を探し出すことこそが資本主義システム” p.65
“「ベズル」と「フェベズル」” p.157
解説
“投資を行うということは、一義的にスチュワードシップなのだ”
最近、大型の設備投資を必要とする産業が減少しており、それに伴って株式市場での資金調達は年々減少している
また、今やIPOと増資によって株式市場に流入する資金よりも自社株買いや配当によって流出する資金の方が多い状況である
それでは株式投資は何のために存在するのか
著者は企業が正しく事業戦略を遂行するのを見守ること、すなわちスチュワードシップこそが投資の役割なのだと主張している
“収益機会を探し出すことこそが資本主義システム”
現代投資理論において、利用可能な収益機会はすでに利用されているという効率的市場仮説が前提となっている
しかし、著者は
「効率的市場仮説は、うまい話などないという現実の重要な一面を看過しながら、同じくらい根本的な一面を見逃している。やすやすとは手に入らない収益機会を探し出すことこそが、資本主義システムの原動力であるという点だ。」
と語っている
“「ベズル」と「フェベズル」”
半世紀以上も前、J・K・ガルブレイスは横領の次のような特性があると考察した
「犯罪が実行されてから露見するまでに数週間、数ヶ月間、数年間といった月日が過ぎ去る。この期間は偶然にも、横領者が得をし、横領された側が損をしたと感じていない期間と一致する。心理的には富の純増が起こっているわけだ。」
ガルブレイスはこの富の増加を「ベズル(bezzle 未発覚横領)」と表現した。
バフェットの相棒、チャールズ・マンガーは犯罪でなくても勘違いか自己欺瞞でもこの富は存在するとし、幻想が誕生してから打ち砕かれるまでの間だけ存在する富を、フェベズル(febezzle 機能的に未発覚横領と等しいもの)と名付けた
ITバブルや信用膨張が巨大なフェベズルを生み出すが、その評価益は幻想が誕生してから打ち砕かれるまでの間だけ存在する富である
総合評価
難易度
中級(金融関係者等)
資産運用の役立ち度(星1~5)
⭐️⭐️⭐️⭐️
金融業者にとって、お前たちはもう必要ないと言われているように感じる一冊